『秩父三十四観音巡礼記』
第30番〜第34番札所



第30番 瑞竜山 法雲寺
     埼玉県秩父郡荒川村白久

ご詠歌:一心に南無観音と唱うれば 慈悲ふかたにの誓いたのもし
本尊:如意輪観世音菩薩

長泉院から法雲寺までは、歩きの巡礼にはかなりの時間と体力を要します。 秩父の霊場は、納経の受付時間はだいたい17:30ころだと思うが、ここにたどりついたのは、もう日が暮れた18:00過ぎでした。 あたりは、暗くなり民家はあるとはいえ、人通りに少ない秩父の巡礼道はとても寂しげです。 しかし、受付時間は終っているにもかかわらず、本堂の戸を閉めていたお寺の方は、ご苦労様ですとの言葉と共に快く納経を受け付けてくださり、こういう人によって秩父の観音霊場は支えられていて、こういう心ずかいに感謝して心を打たれて巡礼する側もたえずにいるんだなと感心しました。 この日帰宅の途中、法雲寺から秩父鉄道の「しろく」の駅で、一人の年配の男性と一緒になったのですが、なかなか来ない電車を待つ時間に缶ビールで乾杯しながらいろいろな話しを聞かせていただきました。それなりに生活できて健康に自分の足で巡礼できていることについてありがたいと思う一日となりました。 法雲寺の境内は、わりと広くその中にいろいろな花を咲かせるであろう木が綺麗に植えられていて、それを見下ろすように本堂があり整備された庭に迎える人の努力といか気持ちが伝わってきます。




第31番 鷲窟山 観音院
     埼玉県秩父郡小鹿野町飯田観世山

ご詠歌:み山路をかきわけ尋ね行きみれば 鷲のいわやにひびく滝津瀬
本尊:聖観世音菩薩

31番から先は、自家用車を使って、ドライブ巡礼をするのでなく、自身の足とバス電車などを利用して巡礼する場合、一日一箇所が適当なペースだと思います。 電車の駅から札所は遠くなり、バスもかなり本数も限られているので、なかなか思うように移動できないからです。 観音院が他の札所と違うなと感じたのは、まず巡礼道に茶店兼みやげ物店が大きな駐車場を備えていたことです。観音院は、他の札所からひときは離れた場所にあり、ロケーションもかなりやまの中になります。 観音院自体も、紅く目を引く鮮やかな仁王門から何段もの石段を登った先に山の斜面が切り取られたような広場に観音堂があり、岩肌には多くの磨崖仏があり独特の雰囲気があります。薄ぐらい木に囲まれた長い石段を登り切り、境内にたどり着いて明るく視界が開けると、とても気持ち良く、それほど広くはない境内ではお弁当を広げている人も多く見うけられました。 仁王門を初め、本堂もすっきりした美しい形で巡礼でなくとも、観光寺院としても十分に鑑賞に堪えうるものであると思いました。




第32番 般若山 法性寺
     埼玉県秩父郡小鹿野

ご詠歌:願わくは般若の船に乗りを得ん いかなる罪も浮かぶとぞ聞く
本尊:聖観世音菩薩

ここも、歩いて札所を巡るのにはそれなりの難所です。 境内は広く観音堂は奥の院と言われかなり離れています。奥の院は26番札所の岩井堂と同じように山の中にぽつりと立っています。 しかし、木々が立ち並ぶ山でなくごつごつした岩肌を削り取ったような道で、天気が良ければ周囲に秩父の山々を見渡すことが出来ます。 寺院の周囲には、なにもなくバスを待つ間雨が降っていたということもあり、人に会うこともなくとても寂しい場所であるという印象でした。 秩父の霊場を回るときには、帰りにだいたい温泉に寄って帰っていました。 日帰り入浴を受け付けているところもいくつもあり、日帰り専用の施設もあるので、 一日歩きつかれた体を温かい温泉で癒すのは、夏でも冬でもとても心地よい贅沢な時間です。




第33番 延命山 菊水寺
     埼玉県秩父郡吉田町下吉田

ご詠歌:春や夏冬もさかりの菊水寺 秋をながめに送る年月
本尊:聖観世音菩薩

バスを降りて、バス停から延々と畑の間を歩くような場所に菊水寺はあります。 天気の良い暖かな日に回ったこともあり、道端の草花などを観察したりしながら、のんびり散歩のような巡礼道です。 アップダウンの激しい札所を回るのとは違い、札所を巡るためにこれまで何度も足を運んだこともあり、 秩父をゆったりあるいていると、まるで昔から知っている道を久し振りに戻ってきて散歩しているような不思議な感じをうけます。 本堂を入って天井を見上げると、寺の伝承を絵と文字で記した二枚の大きな額が納められており圧巻です。 前立ちの観音像も金色にかがやいて、こちらをやさしく見つめていて、これまでの秩父札所巡りを思い出させ、 はじめて秩父の駅に降り立った時の気持ちを思い起こさせてくれます。




第34番 日沢山 水潜寺
     秩父郡皆野町下日野沢

ご詠歌:よろず代の願いをここに納めおく 苔の下よりいづる水かな
本尊:千手観世音菩薩
    


いよいよ秩父の霊場も最期の一寺となります。 都心からの秩父巡礼の基点からはかなり離れていますが、これまでの長い道中を思いながら歩くのも楽しいものです。 境内に続く参道には、秩父のこれまでの三十三観音の本尊を写した石像が並び満願を祝福してくれているようです。 ここには、満願を果たした巡礼者達の杖などが納められていていかに多くの人に秩父の観音霊場巡礼が歩かれているのかその片鱗を見ることが出来ます。 ここ秩父の三十四番は、西国霊場・坂東霊場をあわせた百観音の満願の寺でも有り、名実ともに満願の寺であるのです。 納経受付では、その事に関する話しも聞くことが出来ますし、満願にまつわる品も数多く取り扱っています。 死に装束で、まわった霊場から現実の世に戻るために、水潜寺の名前の由来ともなっている「水くぐり」の岩屋をくぐり改めてこれまでの垢を落とし 新たな気持ちで今後の人生を歩んでいくことを誓うことが出来ます。







『秩父三十四観音巡礼記』

第 1番〜第 5番札所

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第30番〜第34番札所








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