叫喚地獄


叫喚地獄とは、衆合の下にあり。縦広、前に同じ。
 獄卒の頭、黄なること金の如く、眼の中より火出で、赭色の衣を著たり。手足長大にして疾く走ること風の如く、口より悪声を出して罪人を射る。
罪人、惶れ怖れて、頭を叩き、哀れみを求む。「願はくは、慈愍を垂れて、少しく放し捨かれよ」と。この言ありといへども、いよいよ瞋怒を増す。
 或は鉄棒を以て頭を打ちて熱鉄の地より走らしめ、或は熱き置き反覆してこれを炙り、或は熱き擲げこれを煎じ煮る。
或は駈りて猛炎の鉄の室に入らしめ、或は鉗を以て口を開いて洋銅を潅ぎ、五蔵を焼き爛らせて下より直ちに出す。
 罪人、偈を説き、閻羅人を傷み恨んで言く、
汝なんぞ悲心なき またなんぞ寂静ならざる 我はこれ悲心の器 我においてなんぞ悲なきや
と。時に閻羅人、罪人に答へて曰く、
己、愛羂に誑られて 悪・不善の業を作り 今悪業の報を受く 何が故ぞ我を瞋り恨むると。
また云く、
汝、本悪業を作りて 欲痴の為に誑らる かの時なんぞ悔いざる 今悔ゆとも何の及ぶ所ぞと。

 人間の四百歳を以て覩率天の一日夜となして、その寿四千歳なり。都率の寿を以てこの獄の一日夜となして、その寿四千歳なり。殺・盗・婬・飲酒の者、この中に堕つ。

 また十六の別所あり。その中に一処あり。
火末虫と名づく。
昔、酒を売るに、水を加へ益せる者、この中に堕ち、四百四病を具す。その一の病の力は、一日夜において能く四大洲の若干の人をして皆死せしむ。
また身より虫出でて、その皮・肉・骨・髄を破りて飲み食ふ。
 また別所あり。雲火霧と名づく。
昔、酒を以て人に与へ、酔はしめ已りて、調り戯れ、これを弄び、かれをして羞恥せしめし者、ここに堕ちて苦を受く。
謂く、獄火の満ること、厚さ二百肘なり。獄卒、罪人を捉へて火の中に行かしむるに、足より頭に至るまで一切洋き消え、これを挙ればまた生く。かくの如く無量百千歳、苦を与ふること止まず。余は経文の如し。
また獄卒、罪人を呵嘖し、偈を説いて云く、
仏の所において痴を生じ 出世の事を壊り 解脱を焼くこと火の如くなるは いはゆる酒の一法なりと。
      



●等活地獄●
罪状:殺生の罪を犯したもの

●黒縄地獄●
罪状:殺生・盗みの罪を犯したもの

●衆合地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫の罪を犯したもの

●叫喚地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒の罪を犯したもの

●大叫喚地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒の大罪を犯したもの

●焦熱地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語の罪を犯したもの

●大焦熱地獄●
罪状:殺生・盗み・尼への邪淫・飲酒・妄語の罪を犯したもの

●無間地獄●
罪状:両親の殺生・仏の教えを守らない罪を犯したもの








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