黒縄地獄


黒縄地獄とは、等活の下にあり。縦広、前に同じ。
 獄卒、罪人を執へて熱鉄の地に臥せ、熱鉄の縄を以て縦横に身に絣き、熱鉄の斧を以て縄に随ひて切り割く。
或は鋸を以て解け、或は刀を以て屠り、百千段と作して処々に散らし在く。また、熱鉄の縄を懸けて、交へ横たへること無数、罪人を駈りてその中に入らしむるに、悪風暴かに吹いて、その身に交へ絡まり、肉を焼き、骨を焦して、楚毒極りなし。
 また、左右に大いなる鉄の山あり。山上におのおの鉄の幢を建て、幢の頭に鉄の縄を張り、縄の下には多く熱き鍋あり。罪人を駈り、鉄の山を負ひて縄の上より行かしめ、遥かに鉄の鍋に落して摧き煮ること極りなし。
等活地獄及び十六処の、一切の諸苦を十倍して重く受く。
 獄卒、罪人を呵嘖して云く、「心はこれ第一の怨なり。この怨、最も悪となす。この怨、能く人を縛り、送りて閻羅の処に到らしむ。汝、独り地獄に焼かれ、悪業の為に食はる。妻子・兄弟等の親眷も救ふことあたはず」と。
 後の五の地獄は、おのおの前々の一切の地獄のあらゆる諸苦を以て十倍して重く受くること、例してこれを知るべし。

 人間の一百歳を以て三十三天の一日夜となして、その寿一千歳なり。天の寿を以て一日夜となして、この地獄の寿一千歳なり。殺生・偸盗せる者、この中に堕つ。

 また異処あり。等喚受苦処と名づく。
謂く、嶮しき岸の無量由旬なるに挙げ在き、熱炎の黒縄にて束ね縛り、繋ぎ已りて、しかして後にこれを推して、利き鉄刀の熱地の上に堕す。鉄炎の牙の狗に食はれ、一切の身分、分々に分離す。声を唱へて吼え喚へども、救ふ者あることなし。昔、法を説くに悪見の論に依り、一切不実にして一切を顧みず、岸に投げて自殺せる者、ここに堕つ。
 また異処あり。畏熟処と名づく。
謂く、獄卒、杖を怒らせて急に打ち、昼夜に常に走り、手に火炎の鉄刀を執り、弓を挽き、箭を弩へ後に随ひて走り逐ひ、斫り打ちて、これを射る。昔、物を貪るが故に、人を殺し、人を縛りて、食を奪へる者、ここに堕つ。



●等活地獄●
罪状:殺生の罪を犯したもの

●黒縄地獄●
罪状:殺生・盗みの罪を犯したもの

●衆合地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫の罪を犯したもの

●叫喚地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒の罪を犯したもの

●大叫喚地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒の大罪を犯したもの

●焦熱地獄●
罪状:殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語の罪を犯したもの

●大焦熱地獄●
罪状:殺生・盗み・尼への邪淫・飲酒・妄語の罪を犯したもの

●無間地獄●
罪状:両親の殺生・仏の教えを守らない罪を犯したもの








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